定款の記載事項(合同会社)

任意で記載する事項

第577条「任意的記載事項」については、「通常記載する事項」「任意で記載する事項」に分けてご説明します。
第577条「任意的記載事項」については、主に会社法の「第三編 持分会社」と「第七編 雑則」に記載されていますが、ここでは定款に記載する順番で紹介します。
当事務所では、エクセルで作成した「定款記載事項記入シート」にて、関連する会社法の条文及び定款の記載例を記載しておりますので、ここでは記載事項の項目と関連する会社法の条文および解説のみとします。
また、引用している会社法の条文は、説明に必要な部分のみ抜粋しておりますので、ご了承ください。

会社の業務及び財産状況に関する調査

(社員の持分会社の業務及び財産状況に関する調査)
第592条 業務を執行する社員を定款で定めた場合には、各社員は、持分会社の業務を執行する権利を有しないときであっても、その業務及び財産の状況を調査することができる。
2 前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。ただし、定款によっても、社員が事業年度の終了時又は重要な事由があるときに同項の規定による調査をすることを制限する旨を定めることができない。
《解説》
上記の規定により、業務及び財産状況に関する調査は、業務執行社員のみによって行うこととする旨の定款の定めができます。
ただし、事業年度の終了時又は重要な事由があるときは、業務執行社員以外の社員であっても、業務及び財産状況に関する調査をすることができます。
日常の業務が、業務執行社員によって行われる事が、業務及び財産状況に対する責任の上で、明確化されるなどの効果が期待されます。

競業の禁止

(競業の禁止)
第594条 業務を執行する社員は、当該社員以外の社員の全員の承認を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
一 自己又は第三者のために持分会社の事業の部類に属する取引をすること。
二 持分会社の事業と同種の事業を目的とする会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
《解説》
上記規定の通り、原則として社員の全員の承諾が必要ですが、定款によって要件を軽減することができます。
ただし、別段の事情がなければ、特に記載する必要はないと思います。

利益相反取引の制限

(利益相反取引の制限)
第595条 業務を執行する社員は、次に掲げる場合には、当該取引について当該社員以外の社員の過半数の承認を受けなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
一 業務を執行する社員が自己又は第三者のために持分会社と取引をしようとするとき。
二 持分会社が業務を執行する社員の債務を保証することその他社員でない者との間において持分会社と当該社員との利益が相反する取引をしようとするとき。
《解説》
上記規定の通り、原則として社員の過半数の承諾が必要ですが、定款によって要件を加重することができます。
ただし、別段の事情がなければ、特に記載する必要はないと思います。

持分の譲渡

(持分の譲渡)
第585条 社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。
2 前項の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。
3 第六百三十七条の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡に伴い定款の変更を生ずるときは、その持分の譲渡による定款の変更は、業務を執行する社員の全員の同意によってすることができる。
4 前三項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
《解説》
上記規定の通り、持分を譲渡するには、その社員以外の社員の全員の承諾が必要です。
ただし、持分の譲渡については、会社法の規定とは異なる定めができます。

任意退社

(任意退社)
第606条 持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合又はある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合には、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができる。この場合においては、各社員は、六箇月前までに持分会社に退社の予告をしなければならない。
2 前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
3 前二項の規定にかかわらず、各社員は、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができる。
《解説》
上記規定の通り、各社員は、事業年度の終了の時に退社することができますが、その6ヶ月前に予告をする必要があります。ただし、定款の定めにより、その期間を短縮又は伸長などすることができます。

法定退社

(法定退社)
第607条 社員は、前条、第六百九条第一項、第六百四十二条第二項及び第八百四十五条の場合のほか、次に掲げる事由によって退社する。
一 定款で定めた事由の発生
二 総社員の同意
三 死亡
四 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 解散(前二号に掲げる事由によるものを除く。)
七 後見開始の審判を受けたこと。
八 除名
《解説》
任意退社は、各社員の意思によって退社する場合ですが、法定退社は、各社員の意思によらずに、上記事由によって当然に退社します。
さらに、定款で退社となる事由を追加する事ができます。

社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合

(相続及び合併の場合の特則)
第608条 持分会社は、その社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合における当該社員の相続人その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めることができる。
2 第六百四条第二項の規定にかかわらず、前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の一般承継人(社員以外のものに限る。)は、同項の持分を承継した時に、当該持分を有する社員となる。
《解説》
『相続人その他の一般承継人』とは、自然人の社員が亡くなった場合は、その相続人が社員となりますが、法人の社員が消滅した場合は、その権利を承継する者が社員となるため、このような表現がされます。
上記規定を定款に定めない場合は、第607条(法定退社)の規定が適用されるため、社員の死亡又は合併により消滅した場合は、退社となります。

計算書類の閲覧等

(計算書類の閲覧等)
第618条 持分会社の社員は、当該持分会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
一 計算書類が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 計算書類が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
2 前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。ただし、定款によっても、社員が事業年度の終了時に同項各号に掲げる請求をすることを制限する旨を定めることができない。
《解説》
業務執行社員と業務を執行しない社員がいる場合は、業務を執行しない社員の計算書類の閲覧を制限することで、日常の業務が、業務執行社員によって行われる事が、財産状況に対する責任の上で明確化されるなどの効果が期待されます。

利益の配当

(利益の配当)
第621条 社員は、持分会社に対し、利益の配当を請求することができる。
2 持分会社は、利益の配当を請求する方法その他の利益の配当に関する事項を定款で定めることができる。
《解説》
上記規定の通り、利益の配当に関する事項を定款で定めることができます。
ただし、利益の配当については、会社法による財源規制があります。簡素に説明すると、利益が出ていなければ配当をすることができません。
詳細については、当事務所にて作成した「定款の記載事項(補足説明)」にまとめてありますので、業務をご依頼された方に提供しております。

出資の払戻し

第六節 出資の払戻し
第624条 社員は、持分会社に対し、既に出資として払込み又は給付をした金銭等の払戻し(以下この編において「出資の払戻し」という。)を請求することができる。この場合において、当該金銭等が金銭以外の財産であるときは、当該財産の価額に相当する金銭の払戻しを請求することを妨げない。
2 持分会社は、出資の払戻しを請求する方法その他の出資の払戻しに関する事項を定款で定めることができる。
《解説》
上記規定の通り、出資の払戻しに関する事項を定款で定めることができます。
ただし、出資の払戻しについては、会社法による財源規制があります。
詳細については、当事務所にて作成した「定款の記載事項(補足説明)」にまとめてありますので、業務をご依頼された方に提供しております。

定款の変更

(定款の変更)
第637条 持分会社は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって、定款の変更をすることができる。
《解説》
上記規定の通り、定款の変更は総社員の同意が必要ですが、定款に定めることで「総社員の3分の2以上の同意」などに要件を緩和することができます。

解散の事由

(解散の事由)
第641条 持分会社は、次に掲げる事由によって解散する。
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 総社員の同意
四 社員が欠けたこと。
五 合併(合併により当該持分会社が消滅する場合に限る。)
六 破産手続開始の決定
七 第八百二十四条第一項又は第八百三十三条第二項の規定による解散を命ずる裁判
《解説》
上記規定の通り、『存続期間』あるいは『解散の事由』を定款で定める事ができます。

組織変更

第二款 持分会社の手続
第781条 組織変更をする持分会社は、効力発生日の前日までに、組織変更計画について当該持分会社の総社員の同意を得なければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
《解説》
組織変更とは、持分会社を株式会社にする場合とその逆の場合の事をいい、ここでは株式会社となる場合を意味します。
上記規定の通り、組織変更は総社員の同意が必要ですが、定款に定めることで「総社員の3分の2以上の同意」などに要件を緩和することができます。

 
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