定款の記載事項(株式会社)

通常記載する事項

第29条「任意的記載事項」については、「通常記載する事項」「任意で記載する事項」に分けてご説明します。
第29条「任意的記載事項」については、主に会社法の「第二編 株式会社」と「第七編 雑則」に記載されていますが、ここでは定款に記載する順番で紹介します。
当事務所では、エクセルで作成した「定款記載事項記入シート」にて、関連する会社法の条文及び定款の記載例を記載しておりますので、ここでは記載事項の項目と関連する会社法の条文および解説のみとします。
また、引用している会社法の条文は、説明に必要な部分のみ抜粋しておりますので、ご了承ください。

公告の方法

左記メニュー「必要最小限」−「(共通)公告の方法」で説明した通りです。
(左記メニューは、上部メニュー「Home」に戻ると全て表示します。)

発行可能株式総数

左記メニュー「必要最小限」−「(株式)株式総数」で説明した通りです。

株券の不発行

(株券を発行する旨の定款の定め)
第214条 株式会社は、その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨を定款で定めることができる。
《解説》
平成18年の会社法施行により、株券は発行しないことが原則となり、株券不発行の場合は、記載する必要はありませんが、株券不発行を明確にするため、あえて記載します。

株式の譲渡制限

左記メニュー「必要最小限」−「(株式)株式の譲渡制限」で説明した通りです。

指定買取人

(株式会社又は指定買取人による買取り)
第140条 株式会社は、第百三十八条第一号ハ又は第二号ハの請求を受けた場合において、第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をしない旨の決定をしたときは、当該譲渡等承認請求に係る譲渡制限株式(以下この款において「対象株式」という。)を買い取らなければならない。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
《解説》
譲渡制限株式の株主は、その株式を他人に譲渡する場合は会社の承認が必要ですが、会社が承認しない場合は、会社又は指定買取人が買取らなければなりません。
しかし、会社が買取るとなると、資産が減少するため、指定買取人を定めておくことをお勧めします。

株主名簿記載事項の記載又は記録の請求

(株主の請求による株主名簿記載事項の記載又は記録)
第133条 株式を当該株式を発行した株式会社以外の者から取得した者(当該株式会社を除く。以下この節において「株式取得者」という。)は、当該株式会社に対し、当該株式に係る株主名簿記載事項を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができる。
2 前項の規定による請求は、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める場合を除き、その取得した株式の株主として株主名簿に記載され、若しくは記録された者又はその相続人その他の一般承継人と共同してしなければならない。
《解説》
譲渡による株式の取得において株式取得者は、原則として、株主名簿に記載された者と共同して名義変更をする必要があるため、その旨を定款に記載します。

質権の登録及び信託財産の表示

(株式の質入れの対抗要件)
第147条 株式の質入れは、その質権者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない。
第154条の二 株式については、当該株式が信託財産に属する旨を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、当該株式が信託財産に属することを株式会社その他の第三者に対抗することができない。
《解説》
株式は質入れすることができますが、株主名簿にその旨の記載がない場合は、会社およびその他の第三者にその旨を主張できません。
また、株式が信託財産に属する場合も、上記の株式の質入れの場合と同様です。そこで、定款には、会社に対する手続きについて記載します。

基準日

第124条 株式会社は、一定の日(以下この章において「基準日」という。)を定めて、基準日において株主名簿に記載され、又は記録されている株主(以下この条において「基準日株主」という。)をその権利を行使することができる者と定めることができる。
《解説》
基準日は、毎事業年度末日の最終株主名簿に記載された議決権を有する株主を、その事業年度に関する定時株主総会において権利行使すべき株主とするのが一般的です。

株主の住所等の届出

(株主に対する通知等)
第126条 株式会社が株主に対してする通知又は催告は、株主名簿に記載し、又は記録した当該株主の住所(当該株主が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。
《解説》
株券を発行しない会社では、株主名簿に記載された者が、株主としての権利を行使できる者であるため、株主の住所等の届出について定款に記載します。

招集

(株主総会の招集)
第296条 定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
2 株主総会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。
《解説》
定時株主総会及び臨時株主総会の招集の定めを定款に記載します。

議長

(議長の権限)
第315条 株主総会の議長は、当該株主総会の秩序を維持し、議事を整理する。
2 株主総会の議長は、その命令に従わない者その他当該株主総会の秩序を乱す者を退場させることができる。
《解説》
株主総会の議長について定款に記載します。

決議

(株主総会の決議)
第309条 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
《解説》
株主総会決議には、普通決議・特別決議・特殊決議(二種類)があり、上記の第309条第1項の規定は、普通決議に関する規定です。
多くの会社では、普通決議の定足数(最低限必要な出席人数)は完全に排除しています。定足数の規定があると、株主総会での決議がいつまでも行えない事態になる恐れがあるためです。
特別決議・特殊決議(二種類)については、第309条第2項〜第4項に記載されていますが、第○○条を参照する必要があり、当事務所では「定款記載事項チェックリスト」の補足説明資料として一通りまとめてありますので、ここでの説明は省略します。

議決権の代理行使

(議決権の代理行使)
第310条 株主は、代理人によってその議決権を行使することができる。この場合においては、当該株主又は代理人は、代理権を証明する書面を株式会社に提出しなければならない。
《解説》
株主総会に代理人が出席する場合の議決権行使について、定款に記載します。

取締役会の設置

左記メニュー「必要最小限」−「(株式)取締役会、監査役の設置」で説明した通りです。

監査役の設置

左記メニュー「必要最小限」−「(株式)取締役会、監査役の設置」で説明した通りです。

取締役及び監査役の員数

左記メニュー「必要最小限」−「(株式)取締役会、監査役の設置」で説明した通りです。

取締役及び監査役の選任

(役員の選任及び解任の株主総会の決議)
第341条 第三百九条第一項の規定にかかわらず、役員を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。
《解説》
取締役及び監査役の選任については、上記条文にあるように、定款によって定足数の軽減と議決数の加重をすることができます。

取締役及び監査役の任期

左記メニュー「必要最小限」−「(株式)取締役、監査役の任期」で説明した通りです。

取締役会の招集

(招集権者)
第366条 取締役会は、各取締役が招集する。ただし、取締役会を招集する取締役を定款又は取締役会で定めたときは、その取締役が招集する。
(招集手続)
第368条 取締役会を招集する者は、取締役会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各取締役(監査役設置会社にあっては、各取締役及び各監査役)に対してその通知を発しなければならない。
《解説》
取締役会設置会社の場合は、取締役会の招集手続きに関する事項を定款に記載します。

代表取締役及び役付取締役

(株式会社の代表)
第349条 取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
2 前項本文の取締役が二人以上ある場合には、取締役は、各自、株式会社を代表する。
3 株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる。
(取締役会の権限等)
第362条 取締役会は、すべての取締役で組織する。
3 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。
《解説》
取締役会を設置しない会社の場合は、代表取締役の設置は任意です。ただし、対外的に代表権を持っている人がだれなのかわかりやすくするために、設置することをお勧めします。
また、取締役会設置会社の場合は、代表取締役の設置が義務付けられています。
会社法では、世間一般的に使われる社長という名称は一切使用せず、代表取締役という名称になっています。

業務執行

(業務の執行)
第348条 取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する。
2 取締役が二人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する。
(取締役会設置会社の取締役の権限)
第363条 次に掲げる取締役は、取締役会設置会社の業務を執行する。
一 代表取締役
二 代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの
《解説》
取締役会を設置しない会社の場合は、原則として各取締役が業務を執行します。ただし、定款に別段の定めがある場合は、その定めによります。
また、取締役会設置会社の場合は、代表取締役及び取締役会の決議で定めた取締役が業務を執行します。

報酬及び退職慰労金

(取締役の報酬等)
第361条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
三 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容
(監査役の報酬等)
第387条 監査役の報酬等は、定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
《解説》
原則として、取締役及び監査役の報酬は、株主総会の決議によって定めます。ただし、定款に定めがある場合は、その定めによります。

事業年度

左記メニュー「必要最小限」−「(共通)事業年度」で説明した通りです。

剰余金の配当

(株主に対する剰余金の配当)
第453条 株式会社は、その株主(当該株式会社を除く。)に対し、剰余金の配当をすることができる。
(剰余金の配当に関する事項の決定)
第454条 株式会社は、前条の規定による剰余金の配当をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)及び帳簿価額の総額
二 株主に対する配当財産の割当てに関する事項
三 当該剰余金の配当がその効力を生ずる日
(中略)
5 取締役会設置会社は、一事業年度の途中において一回に限り取締役会の決議によって剰余金の配当(配当財産が金銭であるものに限る。以下この項において「中間配当」という。)をすることができる旨を定款で定めることができる。この場合における中間配当についての第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。
《解説》
剰余金の配当は、原則として、年1回事業年度末日現在における株主名簿に記載された株主に対して行います。
また、取締役会設置会社では、一事業年度の途中において一回に限り取締役会の決議によって剰余金の配当をすることができます。
ただし、剰余金の配当については、会社法によるさまざまな財源規制があります。簡素に説明すると、利益が出ていなければ配当をすることができません。また、会社の純資産額が300万円を下回る場合には、配当する事ができません。
詳細については、当事務所にて作成した「定款の記載事項(補足説明)」にまとめてありますので、業務をご依頼された方に提供しております。

 
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