会社設立の基礎知識

現物出資

概要

会社設立時における出資としては、金銭以外に不動産や動産などを出資の目的とすることができ、これを現物出資と呼びます。現物出資は、株式会社及び合同会社ですることができますが、株式会社の場合のみ以下の制限があります。

現物出資の制限(株式会社のみ)

株式会社の場合は、原則として、裁判所に対して検査役の選任の申し立てをし、検査役の調査を受ける必要があります。ただし、以下の会社法第33条第10項の第1号〜第3号に定める例外の場合は、検査役の調査は不要です。
@第1号
現物出資財産の総額が500万円を超えない場合
A第2号
有価証券の市場価格として法務省令で定める方法により算定されるものを超えない場合
B第3号
価額が相当であることについて弁護士、公認会計士、税理士又はそれらの法人の証明を受けた場合
現物出資財産が不動産である場合は、上記証明に加えて不動産鑑定士の鑑定評価が必要です。

現物出資できる財産

会社法では金銭以外の財産という規定しかないため、原則として財産価値のあるもので、かつ、譲渡可能なものであれば現物出資とすることができます。ただし、出資額として定款その他の添付書類に記載する必要があるため、金銭に見積ることができるものである必要があります。
具体的には、現物出資で一般的である自動車やパソコンの場合は、ネット上の中古車や中古品の市場価格を参考にして決定します。この場合に、資本金額を多くしたいがために市場価格より高めの価額とすると、公証役場又は法務局で却下される恐れがあるので、市場価格で相当の金額とする必要があります。

現物出資での注意事項

《自動車ローンの支払いが未完の場合》
自動車ローンで購入した場合は、所有権留保という契約形態がとられるため、その車の所有権はローン会社にあるため、現物出資することはできません。

現物出資のデメリット

《不動産・自動車等の場合は所有権移転の手続きが必要》
現物出資をすると、その財産は会社のものとなるため、登記又は登録されているものは、会社設立後に所有権移転の手続きが必要となります。
例として、不動産の場合は、法務局での所有権移転登記が必要で、登録免許税や司法書士に依頼した場合は手数料がかかります。また、自動車の場合は、陸運局等での名義変更が必要で、自動車取得税や手数料等の費用や行政書士に依頼した場合は手数料がかかります。
さらに、不動産の火災保険や自動車の任意保険に加入している場合は、その名義変更も必要です。
《税金がかかる場合》
不動産の場合は、上記登録免許税以外に、新たに所有者となった会社に対して、不動産取得税や固定資産税が課税されます。自動車の場合は、上記自動車取得税以外に、会社に対して自動車税が課税されます。
また、土地・建物等を現物出資した発起人又は社員に対して、譲渡所得税がかかる場合があります。譲渡所得の対象となる資産と課税方法については、以下国税庁のHPを参照ください。
国税庁HP「No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法」へのリンク

現物出資のメリット

《資本金に関して》
金銭以外の方法で、資本金を大きくする事ができます。
《会計処理に関して》
自動車・パソコン等を現物出資した場合は、原則として固定資産となり減価償却によって費用として計上できます。
また、現物出資したものが少額の場合は、消耗品費として費用処理ができます。これは、白色申告と青色申告では金額が異なるため、詳細については、以下国税庁のHPを参照ください。
国税庁HP「No.2100 減価償却のあらまし」へのリンク

 
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